#2023年ベストアルバム 10選

2023年もたくさん音楽聴きました。いえ~い。

先日2023年以前リリースの音楽を先にまとめましたが、もちろん今年リリースの音楽も聴きました。その中で特に「好きだな~」と思ったものや衝撃を受けたもの、これからも聴きそうなものやぶっちゃけ来年聴いてるかわかんないけど今年気持ち良く聴いたもの、諸々込みで10枚を選んでみました。

順位をつけるか迷ったのですが、SNSや雑誌の様々なAOTY2023を見ていて『順番ついてる方が読んでて面白いな』と思ったのでつけました。

点数までつけているわけではないですが、順位付けのおおまかな基準はファーストインプレッション:まだ飽きてない:これからもっと聴きたい=5:3:2くらいです。

10枚まとめたリストはこちら。

1.花降る空に不滅の歌を / a flood of circle

2.ひみつスタジオ / スピッツ

3.The Novembers / THE NOVEMBERS

4.XIIX / XIIX

5.迷跡波 MyGO!!!!!

6.RIDE / Subway Daydream

7.Tokyo Emotional Gakuen / BIGMAMA

8.Camera Obscura / People In The Box

9.Ninth Peel / UNISON SQUARE GARDEN

10.UNDERTOW / SPOILMAN

一枚ずつコメントを載せます。書いた時期がまちまちなので文章によってテイストが結構違うかも。

最後にまとめと、この10枚に入れなかったけど好きなアルバムも紹介して終わろうと思います。

 

1.花降る空に不滅の歌を / a flood of circle

「自分は自分」という言葉のナイフで自分の腹を開いて曝け出す様は生半可な共感を寄せ付けない。それでいて、《ハロー 俺は如何様師 こいつで食ってます飯》とシビアな自己言及にすら自ら皮肉を吐いて歌にする。けれどそのどちらもが“本音”であると感じる。それが事実であるかどうかは関係なく、そう感じさせる力がこのアルバムにはある。ステージに立つ人間・佐々木亮介としての覚悟がこの一枚には込められている、と思う。

a flood of circleはハードと呼ぶには明るく、ポップと呼ぶにはダーティーな音楽性を持っていると常々思っていて、これを半端と感じるか、個性と捉えるかは聴き手によって大きく変わると思う。そういう、一言で説明しようとすると片手落ちになるバンドのシルエットと、その身はまだ道の途中であると歌う佐々木さんの姿がこのアルバムではピッタリ重なっている。だから余計にこのアルバムには“嘘がない”と感じるのだろう。2023年、最も“俺もこのバンドも生きている”と感じたロックンロール・アルバム。

 

2.ひみつスタジオ / スピッツ

ロックバンド最高!ロックバンド大好き!何年経ってもロックバンドが一番!

と俺は思っているが、スピッツの方が断然強くそう思っていそうだ。たま~に「ロック大陸漫遊記」という草野マサムネがパーソナリティを務めるラジオ番組を聴くのだけど、音楽への飽くなき探求心や好奇心が本当にすごいし、夏のイベントでも毎年いろいろな曲をカバーしてみせたりと、高いアンテナでキャッチしたものをすごくナチュラルに受け入れているのだろうなと感じる。

そうした人たちが作った、ロックバンドへのロマンが詰まったアルバム、最高すぎでした。“ロックンロール”を《子供のリアリティ 大人のファンタジー》と言い換えるマサムネさんのセンスには脱帽するほかない。個人的にも30手前を迎えた今年、私生活でもまあいろいろあって、本当に“そう”だなと感じることしきりである。知ってることが増えれば、新しいものに触れた時に自ずと知っているものと比較して捉えてしまう。それでもなお「いやいや何と比べるまでもなく最高じゃん」って信じられるものがあるのは嬉しいし、そう思えるものをスピッツのようにキャリアの長いバンドがリリースしてくれることは希望だなと思う。過去の作品やパブリックイメージに拘泥せず、軽やかに活動を続けるスピッツ。俺もあんな風に年を取りたい。

 

 3.The Novembers / THE NOVEMBERS

THE NOVEMBERSと俺の歴史は短く、まだ1年経ってないのだが、この1年でかなり急接近できた気もする。ライブにも何度も足を運び、アルバムも特に『Rhapsody in beauty』以降を中心によく聴いた。THE NOVEMBERSがアルバムで魅せる音楽性は今まで自分が通ってこなかったものも多く、きっかけなしに触れてもハマることはなかっただろうと思う。そういう意味で、まずはヒトリエとの対バンが組まれたことに感謝。対バン最高。それから自分にとっての特異点であるModel/Actrizにも感謝。今回の10枚に挙がってないが、たまたまSNSで見かけ、気まぐれで聴いた『Dogsbody』がなければインダストリアル的な音楽への関心も湧かなかっただろう。持つべきはいろいろ教えてくれる音楽アカウント。X最高。

で、このアルバムについてはまずアルバムを聴く前にライブで全曲聴けた、という体験も非常に大きいものだった。ライブに行くとドラムのリズムが印象に残ることが多いのだけど、その印象を持ち帰ってからアルバムを聴けたので、ブライトに鳴っているギターやシンセ、サックスといった上物をリズム隊がしっかりと支えていることや、楽曲内でリズムが強調される部分などの“おいしさ”を一聴目から直感的に掴めた気がする。また、前作、前々作と比べてかなりバンド感の強い作品になっており、やっぱロックバンド最高じゃんってこのアルバムでも思った。リリースタイミング的にも、この1年間のTHE NOVEMBERSと自分の関係の総決算として本作が(俺の中で勝手に)位置づけられるのだけど、それがこんなにかっこいい曲ばっかりのアルバムなので最高。出会えてよかったTHE NOVEMBERS

 

4.XIIX / XIIX

どうしても自分の中で“UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介の別バンド”という感覚が抜けていなかったXIIXなのだけど、今作でその印象は鮮やかに塗り替えられた。今回で三枚目となるこの『XIIX』はバンド史上最も外向きで風通しが良い。歌モノとしての強度はアルバムを出すごとに強くなっていたけれど、「シトラス」「うらら」のような、軽やかなままメロディを聴かせる曲まで出てくるとなると、本当にこのバンドは底なしだなと思わされる。そして斎藤さんの歌。うまく説明できないのだけど、XIIXのやや後ろに重心を置いたメロディのグルーヴを捉えて裏拍を気持ち良く聴かせるの、歌がうますぎる……!と感動しています。

ところで、自分は歌詞を良いと感じるかどうかは書く人と聴く人のユーモアによる部分だと思う。つまり、韻の踏み方にしろ言葉の選び方にしろ、①作詞家自身のユーモア②受け取り側の価値観(何を面白いと思うか)で良いと思えるかどうかが全く変わる。XIIXで詞を書いているのは斎藤宏介なんですけど、俺この人の言語的な感覚めっちゃ好きだなと思います。おやじギャグと紙一重のシュールさをダサく感じさせないの、すごい。

 

5.迷跡波 MyGO!!!!!

アニメが面白くて、その熱を持ったままアルバムを聴けたのも自分にとってかなりポイントが高かった。昨年の『結束バンド』しかり、音楽を物語ごと楽しめるのはアニソンの良いところ。

アニソンらしく耳に残るメロディーががっちり自分の心を掴んでくるのもそうなのだけど、何よりポエトリーの迫力が凄まじい。ボーカルが声優という特性の新たな活かし方だと思うし、高松燈役・羊宮妃那さんのポエトリーから“なんちゃって”にならない芯の強さを感じる。なんだけどコーラスで周りから聴こえてくるのはがっつりアニメ的な甘めの高音だったりする。こういう不思議なバランスこそアニソンでしかなかなか味わえないものだなと感じていて、いつまでもアニソンやキャラソンを聴く理由の一つでもあります。

 

6.RIDE / Subway Daydream

インタビューなんかを読むと曲を書く人がかなりナードなバンド音楽好きで、実際インタビューで出てきたリファレンス元を聴いたら「まんまじゃん笑」と思ってしまったりもしたんですけど、しかしインディー志向なバンドに留まらない可能性を感じるのは間違いなくボーカルの存在感によるもの。爽やか!明るい!可愛い!楽曲の持つメロディーの良さをより引き出してくれる歌だし、バンドサウンドにもピッタリ合っていてすごく好き。

現状すごく真っ当にシンプルなバンドサウンドで、これから引き出しが増えても面白くなりそうだし、このまま良い曲を作り続けてくれても嬉しい。これからの活躍にも期待しています。本当に。

 

7.Tokyo Emotional Gakuen / BIGMAMA

「青春とはエモーショナルである」というお題目に、バンドが持つ最大限のユーモアと煌びやかさで真正面から回答したのがこのアルバム。テーマが安直なら楽曲もストレートなギターロック。おまけに気を衒わないバラードまでついてくる。ブライトな雰囲気の本作は《挑戦無くして道は開けない》《何のために生きるとか その理由を他人に尋ねるな》と真っ直ぐに聴き手の背中を押す。“陳腐”と紙一重のバランスにある瑞々しさはどこか懐かしくもあり、自分も一歩踏み出してみようかしらと思わせる力強さもあり、なるほど“エモい”。

具体的な“あの頃”を懐古するのでなく、“令和”世代の人間関係を歌うのでもなく、物語めいた概念としての“青春”を謳う、いわば『Tokyo Emotional Gakuen』という学園ドラマ/アニメのイメージソングと捉えるのが一番しっくりくる。そう考えると自分がこのアルバムに共振するのも納得がいく。昔のことは昔の人がいちばん分かってるし、今の10代の空気感を別の何かと比較せずに捉えられるのは当事者たる今の10代だけ。そういった同時代的/限定的な手法を取らず、架空の学園・架空の時間割というコンセプチュアルな作品に仕立て上げることで本作は普遍性を獲得した。《咥えたパンを落とさぬように》と言われ、共感する者はいなくとも、そのイメージは容易に想像できる人はきっと多いだろうと思う。

もっとも、ここで言いたい普遍性とは「誰でも好きになれる」というものではなく、「様々な立場・視点から批評ができる」ものであり、この普遍的な“青春”のモチーフを特に好まない人にとってこの作品はおそらく退屈なものになるだろうという注釈はつけておきたい。ジャンプを読んでいる誰しもが『アオのハコ』を愛読しているわけではない。その中で俺は『アオのハコ』を愛読している。そういう類の話。

 

8.Camera Obscura / People In The Box

何もわからんまま聴いていますが、バンドのアンサンブルがあまりに気持ちいいという、それだけで聴く理由になる。今まで並べてきた通り自分の好みはかなり“メロディーの良いバンドの曲”に偏っており、それらと比べると複雑な構成で「ここが好き」と述べるのが難しい音楽なんですけど、People In The Boxの音楽って本当にPeople In The Boxでしか聴けないし、このアルバムは特にギター、ベース、ドラムと声のうねりが凄まじくて、“よくわからんけど聴くか”と聴き続けています。よくわかんないけどかっこいいんですよ。

とは言え、“何もわからん”と思う理由の一つは自分が普段聴こえてきた言葉以上の意味をほとんど考えないからで、これは自分が悪いと思われます。

 

9.Ninth Peel / UNISON SQUARE GARDEN

初めて聴いた時、“なんかめっちゃ普通だな”と思ったんですけど、これは間違いなくUNISON SQUARE GARDENに対して自分が何か麻痺しているなと思います。まあ、彼らのスタジオアルバムは録音物としてはあまりに優等生すぎて音に感動することがまずない、なんなら録音物としてはインディーズの頃の『新世界ノート』とかの方が味があって良い、と思ったりしてるんですがそれはさておき。

そういう“普通だな”という感覚はたぶん間違ってなかったのだろう、と感じたのはライブでアルバムの曲を聴いてからで、ライブでこれまでと変わらない様子で披露された新曲群を聴いた時にすごく腑に落ちたんですよね。新しいチャレンジをしたり、よりパワーアップしてきたりしたわけでなく、今までのユニゾンを今のユニゾンがやったという話なのであれば、そりゃユニゾン的には“普通”ですよねと。そうと分かればこちらもそう言うつもりで聴くし“普通〜”は“普通にさいこ〜”になりました。「カオスが極まる」を“普通”と称してしまうのはやっぱ麻痺してると思いますが。

自分の中で特別すぎて他のアーティストと比べようという気にもならないので、ここだけ順位はダジャレです。

 

10.UNDERTOW / SPOILMAN

この中だと一番最近聴くようになったアーティストで、もしかしたら来年は聴いてないかもしれないんですが、“年末のベストを決める時に気に入って聴いていた”という記録のためにもここに入れています。THE NOVEMBERSの項でModel/Actrizを自分にとっての特異点と評しましたが、自分の中でこのSPOILMANもそこから延びた線の上にある感覚で聴いてる(同じ音楽と言いたいわけでは全くない、念のため)。“なんもわからん”度はPeople In The Boxをはるかに超えてくるというか、こういう音楽をジャンルとして聴いてきたわけではないのでますます予測不可能で、そうであるが故に、突然の轟音にぶん殴られる感覚や日本語ではないせいで音以上の意味を持たずに耳に入ってくる叫びに「一体何が起きているんだ?/これから何が起きるんだ?」という高揚を禁じ得ない。勢いの凄さで言えば同タイミングでリリースされた『COMBER』もすごいが、自分にとってよりわけがわからないのはこの『UNDERTOW』で、わけがわからないが繰り返し聴きたいと思わされる魅力がある。真面目に聴こうとしたら具合が悪くなりそう。そこがいい。

 

まとめ

こんな10枚になりました。だらだら書いたら総括するのめんどくさくなったので端的にまとめると、「今年も日本のロックバンドが好きでした」です。

今回入らなかったアルバムだと、

Almost there / GRAPEVINE

no public sounds / 君島大空

サーフ ブンガク カマクラ(完全版) / ASIAN KUNG-FU GENERATION

WAGON TRACKS / Kamisado

などが好きで、特にGRAPEVINEはSPOILMANや People In The Boxと入れ替えるか悩んだのですが、結局入れなかったのは前作の『新しい果実』の「これはやべ〜」という印象をどうしても超えてこなかったからでした。君島大空はまだなんか全容を掴みきれてないのと、一曲目が好きすぎてアルバムというか曲で選ぶべきだなと。アジカンは企画盤的な側面が強いからで、Kamisadoは入れない理由もないんですが枚数絞った時にどうしてもSubway Daydreamを優先したかった、という感じでした。

 

来年はどんな音楽をどんな風に聴くんでしょうね。来年も楽しみです。

それではみなさん良いお年を。