2023年よく聴いたアルバム(旧譜編)

2023年のベストアルバムをまとめる前に、今年よく聴いた、2022年までにリリースされたアルバムをまとめてみました。来年以降自分で振り返ったら楽しそうだなと思いまして。

まとめるうえでのルールは

・2022年以前リリースのアルバム

・今年になってからハマったもの(昔からずっと好き、というのは選外)

・枚数は特に定めない、順位も特になし

という感じです。

今年に入ってからよく聴いたものなので、自分にとって「旧譜」という感覚はほとんどないのですが、便宜上そう呼ぶことにします。これ以降その言葉は出てこないんですが。

 

タイトルは下記になります。覚えている範疇で、「いいなこれ!」と思った時系列順になりますが、結果的に大まかに年代を遡る感じになりました。

板歯目『鄙、天国』(2022)

tricot『不出来』(2022)

THE NOVEMBERS『At The Beginning』(2020)

ストレイテナーNexus』(2009)

tacica『sheeptown ALASCA』(2011)

凛として時雨『still a Sigure virgin?』(2010)

スガシカオ『Clover』(1997)

 

アルバムごとの感想は下記。最後はまとめです。

 

板歯目『鄙、天国』(2022)

UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介が言及していたらしい/そのUNISON SQUARE GARDENが出るフェスイベントに出演する/ドラムの庵原さんがUNISON SQUARE GARDENを好きらしい」という理由で今年に入ってから春頃までよく聴いたアルバム。きっかけ全部USG。楽曲に込められた爆発的なエネルギーに若さを感じます。ギターボーカルの千乂さんの声もパワフル。ベースもよく動いており三人のキャラが立った曲が多い。

ワンマンを見た春以降聴く頻度が減ったんですが、最近離れ気味なのは自分がよく言ってる「CDが出てないから」に尽きます。メジャーデビューでもしたらさすがにCD出すでしょうしそういう意味でも売れてほしいです。

「地獄と地獄」という曲で《かっこいいけど可愛いけどバンド名が読めない!!》と歌ってるんですけど俺はそれ以上にアルバムタイトルが読めません。

 

tricot「不出来」(2022)

『ぼっち・ざ・ろっく!』に中嶋イッキュウが曲を提供したことをきっかけに聴き始めたtricot。以前のアルバムもいくつか聴き漁り、一番好きなのはこのアルバムだなと思いました。全体的に見てメジャーデビュー後の方が好み。テクニックが前面に出るものより、それを前提にしていい感じにまとめてくれている曲が好きっぽいです。ギターの音もドラムの音も最近の方がキンキンしすぎなくて聴きやすい。tricotも歌詞で歌ってることを説明してこないのが聴いていて楽。tricotに対していい意味での“聴き流しやすさ”を求めてるようだとこれを書いていて気付きました。『不出来』は聴いていてラフに踊れる感覚があってそこが好きだし、「不出来」でシリアスに引き締まったあとに「上出来-不出来Remix」でチョケて終わる感じも良いなと思います。「不出来」は歌詞も好き。

 

THE NOVEMBERS『At The Beginning』(2020)

THE NOVEMBERSを聴いたきっかけは2月か3月のヒトリエとの対バンで、かつこのアルバムを聴く前にModel/Actrizを触れたことであんまり聴いたことがなかったジャンルに関心を持ったのもハマった要因として大きかったと思います。『Dogsbody』を聴いた後で「未知の音楽に触れてみたい」という気持ちが醸成されていたので、2曲目の「薔薇と子供」からかなりシリアスでインダストリアルな雰囲気に潜り込んでいくこのアルバムもワクワクして聴くことができた。ここを入り口にTHE NOVEMBERSにはかなりハマって、今年はライブにもよく行きました。ライブ終盤は結構鉄板の流れができてるんですけど、そういう様式美みたいなのも含めてかっこいいバンドだなと思います。ここでの選出も、これが一番好きというよりは「THE NOVEMBERSにハマったきっかけの一枚」という側面が強いです。

実は今年1月にUNISON SQUARE GARDENが主催した対バンイベントVG vol.1でCody Lee(季)とTHE NOVEMBERSUNISON SQUARE GARDENのスリーマンがあったんですが、チケットが取れずそれには行けなかったんですね。ただ、そこが入り口だったら全く違う流れで耳にすることになり、今のようにハマっていないかもしれないなと思うので、こういうのって本当にタイミング次第なんだろうなと思ったりしました。

 

ストレイテナーNexus』(2009)

パン工場にバイトに行っていた数週間にめっちゃ聴いた覚えあり。

ストレイテナー、存在は知ってたしフェスで何度か見たこともあったんですけど、めっちゃハマったのは今年でした。「シーグラス」良い曲すぎ~。どのアルバムにも良さがあるので一枚選ぶのも難しいんですけど、よく聴いたのはこの『Nexus』のような気がします。ストレイテナーの曲ってすごく「他のバンドでも聴けそうな気がするけど実際探すとなかなかないし、仮にあってもストレイテナーの方が良い」みたいな印象がある。自分たちの手札でクオリティの高い曲を作り続けている職人のようなバンドなのかもしれない、というのがこの一年聴き続けて感じたことでした。今なら、「ロックバンドを聴きたい」と言われたら自分はこのバンドの名前を出すだろうなと思います。

あと歌詞も結構空想的なモノが多くて、今年触れたブルーアーカイブやアークナイツと重ねて聴いていたのもハマった理由の一つかも(オタク)。

 

tacica『sheeptown ALASCA』(2011)

ふと「ワンマン見たことないな~」と思い、billboardでのライブのチケットが残っているのを知ってライブに行った後からなので、夏頃によく聴きました。他にもいろいろ聴いたんですけど、このアルバムが特に、tacicaというバンドの世界観が濃密に詰まっている感じがします。暗闇の中で小さな光を目指している感じとか、自分の周りを手探りでおそるおそる確かめている感じとか。真面目であるがゆえに臆病になったり考えすぎてしまう心象がアルバムのトーンにもよく表れているように思います。猪狩さんの歌声を聴かせる曲も多くて惹きこまれる。秋頃にワンマンを見た後は去年の『singularity』をよく聴きました。tacicaも、これまでなんとなく好きだったけど今年で明確にフェイバリットに食い込んだ感じがします。

 

凛として時雨『still a Sigure virgin?』(2010)

最近一番ハマっているのはこのアルバムです。Twitterにも書いたんですけど、理性を保ったまま破壊/暴力/気絶を味わえる感じがします。ここからますます「破壊破壊破壊すべてを破壊」という気持ちになろうと思ったらSPOILMANの今年のアルバムになり、よりトリップしようと思ったらTK from 凛として時雨の『flowering』になるのが今の自分の音楽の聴き方です。音楽をこんなにはっきりと「こういう気持ちになりたい」と思って聴くのも初めてかもしれない。

凛として時雨でちゃんと聴いたことあるのがこれと『i'mperfect』だけなので、自分のハマり方としてかなり特殊な例です。昔『i'mperfect』リリースの時に聴いて「かっこいいじゃん!」と思い、他のも聴いてみようと『still a Sigure virgin?』を聴いたらわけわかんなくて時雨はそれきり……だったんですが、10年以上の月日を経てなぜか思い出したこのアルバムを聴いたらめちゃめちゃ好きになっていた、という。むしろ『i'mperfect』にトキめかなくなっていた。

ただTK from 凛として時雨の方でのアルバムが『flowering』から新しいものほどツボを外れていくので、時雨もそうなんじゃないかと思うと、新しいものをわざわざ聴こうという気持ちには今のところあんまりなっていないんですね。……と、これを書きながら2009年の『just A moment』を聴いてみたらよさそうだったので、とりあえず古いものからもうちょっと聴いてみようかなと思いました。

 

スガシカオ『Clover』(1997)

ロックバンドと遠からずな音楽性で、J-POPのフィールドで活躍しているアーティストを聴きたいなと思うことがたまにあり、昨年はスキマスイッチを聴いてみて結局そんなにハマらなかったんですが、同じようなノリでスガシカオを聴いてみたらかなり好みで最近よく聴いています。最近の作品もちらちら聴いているんですけど、初期の装飾少なめな感じが今の好みには合うかも。ファンクってこういう感じか~というのを直感的に感じて、GRAPEVINEのようなバンドがその手のジャンルをどう解釈して落とし込んでいるのかも感覚的に分かり始めた気がします。あくまでポップスの範疇から、自分の知ってる音楽の奥行きを作ってくれるという点でも、聴くのが楽しい。

たぶん他のアルバムも買って聴いたら『Clover』より好きになりそうなんですが、だいたい全容を把握できるレベルで聴けたのが買って聴いた『Clover』なので、今回はこれをピックアップしています。来年もまだ手に入っていないアルバムを買って聴きたいな~と思っています。たぶんですが特に『PARADE』以前のアルバムは全部超好きな予感がする。

 

まとめ

ここに書かなかったもので言うと、スーパーカーの『Futurama』もわりと聴いたし、スカートの『SONGS』もよく聴いたと思います。

基本的にはSpotifyで「これいいな!」と思ったところから始まり、CDが出ていない板歯目以外はすべて新品もしくは中古でCD買って聴いたアルバムでした。なんかよく言ってる気がするんですが、自分にとってSpotifyがお金払って大量に聴ける試聴機と化しており、本腰いれて聴くのはCDとそれをインポートしたWALKMANという不思議な状況になっています。CDを購入するという、ある種の儀式のようなものがあって初めて自分の音楽になった感覚があるのかもしれません。WALKMANで聴けるのが大事なのかと思い、昨年はレンタルとかも試したんですが、買わずにレンタルした音楽は結局ほとんど聴いてない(NUMBER GIRLとか)。不思議です。

あとやっぱり、基本的には好きなバンドとどこかで文脈が繋がる音楽が好きだし、自分の頭の中でマッピングして相違点を考えるような作業とか、その種となる気付きが得られたときのカタルシスとか、そういう部分に音楽を聴く楽しさを見出しているように思います。もちろん、自分の気持ちを支えてくれたり解放してくれたり、無条件に踊れたりする音楽が好き、というのを大前提として。

そういうものを、自分なりの言葉にできたときの気持ち良さがあるから、こうやって不定期に音楽のことを書いています。こういうことを真剣に、もしくは一貫性のある視点で続けていたら、一つの批評になったりするのかもしれないですね。