「光の中へ」から入るSAKANAMON入門

昨年11月に結成15周年を迎えたスリーピースバンド、SAKANAMON。そのギターボーカルであり、ほとんどの楽曲で作詞作曲を手掛ける藤森元生さんが、『ぼっち・ざ・ろっく!』に「光の中へ」を提供しました。ぼざろ新曲&元生さん楽曲提供おめでとうございます!

 

そしてその「光の中へ」を、編曲前のアレンジでSAKANAMONがセルフカバーしてリリースしました。やった〜!!

藤森元生 on Twitter: "楽曲をお渡しした時のプロトタイプをほぼそのままのアレンジでレコーディングしました! コードやフレーズやサウンドの違いを聴き比べて楽しんで下さい!! 遊び心でBPMは「194」にしています!" / Twitter

 


この「光の中へ」の提供で初めてSAKANAMONの名前を知った方もいるんじゃないでしょうか。そんな方にSAKANAMONの曲をこれからも聴いてほしいな!というわけで、本記事では「光の中へ」をきっかけに興味を持った方に向けて、SAKANAMONの楽曲をいくつか紹介していきたいと思います。

 

 

SAKANAMONの特徴といえば、「格好良くて時々お洒落なバンドサウンド」「歌詞や曲構成におけるナンセンスなユーモア」「藤森元生のエモーショナルな歌声」でしょうか。一言で表すならば、「変態と天才の境界線上でくねくね踊っているバンド」です。何言ってんだ?

※あくまで個人的な考えなので、詳しくは公式サイトでチェック。

 

 

1.ミュージックプランクトン


最初に紹介したいのは彼らの代表曲。イントロのギターリフがとにかく耳に残る!ギター、ベース、ドラムそれぞれが主張する、スリーピースならではのタイトなアンサンブルに、ラストのハモリも気持ち良いです。ライブでもド定番のSAKANAMON THE STANDARD。

《平衡感覚保つ機能ぶっ壊して》という歌い出しは爆音で音楽を聴いてることを表しているんだと捉えていますが、こんな表現の仕方があるのか!と感銘を受けました(しかしおよそ十年何も考えずに聴いていたので、気付いたのはごく最近)。

楽曲的には「青春コンプレックス」などに近い印象です。

 


2.幼気な少女


二曲目はこちら。幼気は「いたいけ」と読みます。自分はこの曲で初めて読み方を知りました。

この曲も「ミュージックプランクトン」のような王道ギターロックで、楽曲としては「ギターと孤独と蒼い惑星」的な疾走感のあるテイスト。今回は主に歌詞を紹介したくてピックアップです。

『ぼっち・ざ・ろっく!』のぼっちちゃんは自意識過剰とコンプレックスに塗れた自他共に認める陰キャでしたが、まさに同じメンタリティを持つのがSAKANAMONです。だから自然とぼっちちゃんの境遇、心境とシンクロしてしまう。

 

《嗚呼色々取々の恥

 僕は傍目は負け犬の人で無し

 今は世を偲ぶ仮の姿だと

 言い張って自分を欺く》

まともにコミュニケーションを取れないことを恥じながら、ギターヒーローとしてアリーナを埋める光景を夢想したり。

 

《世渡り知らずの僕が

 今世紀輝く術が無いの一目瞭然

 手を差し伸べてくれるのは

 特殊な感性持つ貴方々だけ

 十分幸せですが何か》

そんなぼっちちゃんにも結束バンドという居場所ができたり。

 


SAKANAMONが自分達と、そして曲を聴いてライブに来てくれる人達のことを歌ったこの曲が、まるでぼっちちゃんのことを歌っているようにも聴こえてしまう。誂えたかのようなこの相性の良さは、ぼざろファンにもきっと刺さるのではないでしょうか。

 


3.UMA


ぼっちちゃんはツチノコですが(?)、ツチノコが登場する楽曲がSAKANAMONにもあります。ファンキーなリズムが気持ち良いこの曲はタイトル通り未確認生物のことを歌っており、藤森さんのナンセンスなセンスが炸裂しています。

UMAの存在にツッコミを入れるのみならず、アブダクションされた人の証言すら飛び出してくるわけですが、この楽曲が面白いのはユーモアが歌詞だけにとどまらないところ。曲の展開も二転三転しながら最後にはなぜか「ラララ……」と歌うハピネスフルなラストへと繋がっていきます。何食ったらこんな曲思いつくんだ。

ちなみにSAKANAMONには「DAVID」という、初対面のデイヴィッドにドンキまでの道を聞かれたことをきっかけに一緒に酒を飲んで仲良くなっていたら地球に隕石が落ちてくる曲もあります。何言ってんだ?

 

ところで「光の中へ」は2番Aメロで突然リズムパターンが切り替わりますが、曲のなかでリズムがガラリと変わる展開はSAKANAMONにとっても得意技の一つ。結束バンド版でこの部分が強調されているのは、編曲の三井さんがSAKANAMONの特徴も汲んだのか、結果的により近づいただけのか……真意は分かりませんが、そう言った点も含めてSAKANAMON版と聴き比べるのも楽しいです。

 


4.TOWER


ストレートなギターロックだけじゃなく、打ち込みを取り入れたエレクトロな楽曲も得意なSAKANAMON。いろんなジャンルを取り入れながら、SAKANAMONカラーでアウトプットしてきます。本当にできることの幅が広く、掘り下げていけばいくほどに藤森さんおよびバンドの発想力に驚かされます。

歌詞には《爪弾き》という「光の中へ」のキーワードが出てくるだけでなく、この曲が収録されたアルバムのタイトルは『INSUROCK』。

「インシュロック(=結束バンド)/飲酒ロック」というもじりが『ぼっち・ざ・ろっく!』とここまで符合するなどとは、いったい誰が予想できたでしょうか。

《妄想に耽った青春はノンシュガー まるで青汁》という歌詞が飛び出してくる名曲「花色の美少女」もこのアルバムに収録。『INSUROCK』、癖のある曲も多いですがSAKANAMONの変態性が如実に表れた無二のアルバムです。

 


5.箱人間


弾き語りから始まり、打ち込みを伴ってゆったり進んでいったかと思えば、途中でバチっとテンポが上がるドラマチックな楽曲。藤森さんの歌声や多重のコーラスがなんだか泣ける。

ロックバンドやライブが好きな人にとっては、「箱」と言われればライブハウスを想像する人も多いのではないでしょうか。そんな箱に集まった人たちの、緩くも確かな連帯をSAKANAMONはことあるごとに歌います。

それでは、ぼっちちゃんにとっての「箱」とはなんなのでしょう。家の押し入れ、教室、ゴミ箱、ライブハウス……。

この曲も当然、『ぼっち・ざ・ろっく!』に向けて書かれた曲ではありません。ですが、例えばそんな風にぼっちちゃんと重ねて考えながら聴いてみることで、貴方にとっての『ぼっち・ざ・ろっく!』、貴方にとってのSAKANAMONの地平がほんの少し広がるのではないかと私は思います。

 

 

 

というわけで今回は5曲紹介させていただきました。

もっと聴いてもらいたい曲がたくさんあるし、ぼっちちゃんのメンタリティや「陰キャ」という単語に対してピンとくるような方には特に刺さる楽曲が多いはず。今回紹介した曲で気になった方は、ぜひ他の曲も聴いてみてもらえると嬉しいです。

一緒に浸ろうサカナモンワールド。