UNISON SQUARE GARDEN『Dr.Izzy』

9thアルバム『Ninth Peel』発売前にUNISON SQUARE GARDENの過去作を遡ってレビューしていく本企画、今回は6thアルバム『Dr.Izzy』です。

これを書くためにディスコグラフィを改めてたどって聴いているのですが、初めて気づくことやなんとなく感じていたことを言語化するきっかけになり、とても楽しいです。本作は、この延長に7th、8thと続くことがよくわかる、現在のUNISON SQUARE GARDENのスタイルを掴むにあたって重要なアルバムであるように感じました。

 

UNISON SQUARE GARDEN『Dr.Izzy』

リリース:2016/7/6

 

UNISON SQUARE GARDENはスリーピースバンドである。前回、前々回のレビューでも一楽曲の情報量の多さに散々触れてきており、そのインフレ化は特にこのアルバムから明確に起きているのだけれど、同時に本作はこのバンドがギター、ベース、ドラムの三人編成であることを強く主張してくる。

本作においてその立役者となっているのはおそらくベースだろう。ベースのフレーズから始まる「マジョリティ・リポート(darling, I love you)」はもちろん、「エアリアルエイリアン」「オトノバ中間試験」「BUSTER DICE MISERY」……様々な楽曲で、『歌える』ベースラインが曲の顔として配置されている。「シュガーソングとビターステップ」をはじめ、メロディの裏でも縦横無尽に動くベースラインは、リズムのニュアンスを生み出すだけでなく、ギターが二本いるバンドにおけるリードギターに近い役割も担っている。ドラムの手数もそれに負けじと(時に過剰なほどに)多い。

ならばギターはどうか。音源として音を分厚くするために重ねてあるのはもちろんなのだけど、重ねられたギターの中に、全く違う動きをするフレーズがほとんど存在しない。それでもしっかりとキャッチーなフレーズになっているのだから唸らされる。

情報量を増やしながらもスリーピースらしさを担保できているのは、そういったギターの重ね方の妙、そして歌心のあるリズム隊によるものだろう。メンバーのプレイヤースキルの高さを存分に活かし、歌はもちろんそれぞれの楽器すべてが主役を張る快作です。