UNISON SQUARE GARDEN『MODE MOOD MODE』

UNISON SQUARE GARDEN9thアルバム『Ninth Peel』発売記念の過去作ディスクレビュー、前回の『Patrick Vegee』に続き、今回は7thアルバム『MODE MOOD MODE』になります。前回の記事は下記より。

hirahira-ki.hatenablog.com

 

 

UNISON SQUARE GARDEN『MODE MOOD MODE』

リリース:2018/1/24

 

J-POP/アニソンの枠を目いっぱいに使ってフレーズとメロディを敷き詰める。カロリーの高い12曲をつけ入る隙もなく並べてカタルシスを作り込む。各楽曲の狙いとアルバム全体を貫通する意識が同じ形で重なるという点で、UNISON SQUARE GARDENというバンドが果たしてどんなバンドなのか/一般的にどう見えているのかを把握するのに現状で一番分かりやすいのは本作だろうと思います。枠の中で(時には枠を拡張しながらも)むちゃくちゃやる。逆に言えば、むちゃくちゃやるのはあくまで枠の中で。彼らのすべての楽曲・アルバムがそう言い切れるとまでは言いませんが、本作はそのスタンスがよく表れています。予想を裏切っても期待は裏切らない。ぎゅっと情報を詰め込んだUNISON SQUARE GARDENの楽曲が、それでもポピュラリティを失わないのはその意識ゆえなのだろうと感じます。

そんな本作で一つ注目したいのは歌詞における「手」という言葉の扱われ方。《差し出された手は噛み千切るけど》(M1-Own Civilization(nano-mile met))、《差し出された手は掴まなかった》(M2-Dizzy Trickster)と、外界を拒絶し孤高を貫かんとする姿勢を見せる始まりは、《テイクミーアウト!照れながら手を握ったら 金輪際 追いつけないとこまで行きましょう》《お手をどうぞ、right!》(M10-10% roll, 10% romance)、《ちょっと信じてみてはくれませんか 保証がないのは本当だけど 僕の手握っていいから》(M12-君の瞳に恋してない)と、リスナー=外界に彼らから手を握ろうとする形でエンディングを迎えます。また、《あてもないままに今をかき分ける》(M6-Silent Libre Mirage)、《高らかに 空気空気 両手に掴んで 咲き誇れ美しい人よ》(M9-Invisible Sensation)と、手を使った動作もアルバムの中で一人称から二人称へと移り変わっていく。タイアップとなった作品から連想された部分もあるにせよ、ストーリーとして作品のカタルシスをより高めているこれらの歌詞は、リスナーとの(バンドにとって)適度な距離感を保とうとするバンドのスタンスを実は懇切丁寧に説明してくれているとも言えそうです。

律儀な天邪鬼。そんなUNISON SQUARE GARDENのバンド像が高い純度で結実したのが本作なのでした。