UNISON SQUARE GARDEN『Patrick Vegee』

UNISON SQUARE GARDENの9thアルバム『Ninth Peel』が2023/4/12に発売となります。それに合わせてこれまでリリースされてきたアルバムを今一度自分なりに振り返ってみたいな、ということで短いディスクレビューの形で書いてみることにしました。

順番ですが、リリースをさかのぼっていく形を取ろうかなと思います。深い理由はないですが、ヒストリーと絡めて語るのはそれこそインタビューなどで本人たちがさんざんやっている(やらされている)と思うので。

というわけで今回は8thアルバム『Patrick Vegee』です。

 

 

UNISON SQUARE GARDEN『Patrick Vegee』

リリース:2020/9/30

 

曲順の緩急や曲間の空白、前曲の歌詞の末尾が次曲のタイトルにかかるような遊び心。最初から最後まで、通して聴きたくなるようにデザインされたアルバムです。しかしその内容を一言で表すのは難しい。ポップか?ロックか?リスナーに寄り添うのか?突き放すのか?どれでもありつつ、一つに絞れはしません(※広く見ればどの曲もメロディやフレーズを聴かせるポップミュージックであることに間違いはありませんが)。あるいは、一言で説明できない雑多さをアルバムとして成り立たせるための緻密な設計と言えるのかもしれません。バラエティに富んだ楽曲を並べながらも、『アルバムであることに意味を持たせる』ことに腐心したのだろうと感じます。それが(リリースされた2020年を含めた)今の時代に逆行するスタンスであることは言わずもがな。

しかしそうでもしなければ、例えばストリングスをふんだんに取り入れた「春が来てぼくら」と高速BPMで過剰なまでの情報の渦を叩き込んでくる「Phantom Joke」を同じアルバムに入れて作品として仕上げることはできなかったでしょう。人によってはトゥーマッチにも感じられるであろう情報量を一曲に詰め込み、それらを一枚のアルバムとしてさらりと聴かせる。UNISON SQUARE GARDENにとってアルバムは、単なる楽曲集ではなく、バンドの歩み・人間の成長をまとめたドキュメントではなく、もちろん機能的なプレイリストでもなく、一つの楽曲と同じ『作品』である。本作はそのアティチュードが前面に押し出された一枚でした。